野村総合研究所 (NRI)
横石 江里 さん
システムエンジニア
長崎県出身。熊本大学を卒業後技術系企業に就職し、2018年に野村総合研究所(NRI)に入社。現在はDX基盤事業本部 福岡ソリューション開発二部に所属し、社内の海外トレーニー制度を活用してNRIヨーロッパ・デンマーク支店に赴任中。

横石江里さんは熊本大学でマーケティングとメディア研究を専攻していた。在学中は、企業マーケティングの事例と、それがどのようにビジネス機会につながるかを研究した。当初はIT業界への就職を考えてはいなかったが、多面的な問題解決や効果的な顧客とのコミュニケーションについて学ぶ中で、学生時代に得た学びを実践に活かす方法としてITの可能性や潜在性を考慮するようになっていった。大学を卒業すると、テクノロジー系の企業に就職し、学んだスキルや知識を活かすことを決意した。「当時はシステム技術に関する予備知識もなければ、エンジニアリングのスキルも持っていませんでした」と横石さんは言う。それでも職場の仲間を通じて産業システムの基盤構築やエンハンスの知識をすぐに身に着けていった。

より多くの機会を求めて

横石さんはその後2018年に大きく方向転換を図り、福岡にある野村総合研究所(NRI)のDX(デジタルトランスフォーメーション)の部署へと転職した。マーケティングからテクノロジー系へ、さらには企業のDXと金融テクノロジーへと彼女に舵を切らせたきっかけは何だったのだろうか。「ビジネスの経験の幅を広げたかったのだと思います。NRIの仕事は大変ですが、非常にやりがいも刺激もあります」。

このインタビューをオンラインで実施していた時点で横石さんは、NRIの社内研修の一貫として、デンマーク・コペンハーゲン拠点での生活を始めて4か月目だった。「私の使命は、NRIの3つの海外拠点をフルに活用して、日本のITエンジニアがよりバランスよく働ける職場を実現することです。具体的には24時間365日の対応が求められる運用保守業務の一部を海外拠点に移管し、日本のエンジニアのワークライフバランスやエンゲージメント向上に貢献することを目指しています」。

横石さん自身も運用保守業務に従事し、システムの安定稼働のために24時間365日のサービスを提供するチームに所属していた。「お客様のサービス安定稼働のために24時間365日のサポートを行うことは、DX部にとっては非常に重要なことです」と、横石さん。「迅速で正確なサポートが常時要求されることは、お客様にとっては当たり前のことだと思います。私がお客様の立場だったとしてもやはり同じレベルを求めるでしょうし、それに応えることが運用保守サービスの価値の一つだと感じています。ただし、それを日本のエンジニアのみで対応していくことは非効率な部分もあるため、海外拠点のリソースを活用することで世界規模のワークシェアリングを実現し、日本のエンジニアの負担を軽減することができればいいと思っています」。

研修プログラムに参加する前の2023年、横石さんは15名ほどのメンバーからなるプロジェクトに所属し、証券システムの更改・強化プロジェクトに取り組んでいた。当時を振り返って横石さんは、この経験のおかげでいちエンジニアとして成長できたという。スキル、洞察力や知識に加え精神的にもだ。「アプリ開発にも挑戦させてもらいました。海外のパートナー企業と協力して開発プロジェクトを進めたことはとてもいい経験でした。今にして思えば、この時の経験のおかげで、この研修プログラムに応募する資質や自信が得られたのだと思います。海外のエンジニアたちとのコミュニケーションを通して、多様性ある環境の中で、具体的な目標に向かって全員が一丸となって努力しながら、チームとして働くことの喜びも知ることができました」。

多様性ある環境で働く

当時のプロジェクトがひと段落し、機能し始めたところで横石さんは研修プログラムに応募し、見事に審査に合格した。将来のキャリアアップはもちろん、「ひとりで日本を離れて長期間海外に暮らす機会は、これが最初で最後かもしれないという思いもありました」と言う。「コペンハーゲンに来る前は、グローバルなプロジェクトという概念が頭に浮かぶことはあまりありませんでした。しかし今では、プロジェクトを見る視点には何通りもあって、チームと一緒に考え、調整する仕方も複数あるのだということを学びました。研修は1年間だけですが、日本に戻ったらまたグローバルなプロジェクトに取り組む機会が得られたらと思っています」。

横石さんはこう続ける。「日本からここに来て以来、文化と言語に非常に大きな違いがあることに気づきました。こちらの方がはるかに多様性には寛容ですし、国際的だと感じます。毎日何か新しい発見があり、とても充実した生活が送れています。現在、働きながら英語とデンマーク語の両方を学んでいます。特にデンマーク語の習得には苦労しているのですが、こちらの同僚と、実際に彼らの言語を使ってコミュニケートできた時の嬉しさは格別です」。

グローバルな若い人材を育てる

横石さんによると、デンマークに行く前の彼女は、決して「海外志向」ではなかったという。彼女が初めて外国に行ったのは大学在学中のことだった。それでも彼女は、そのビジョンと熱意ゆえに海外研修プログラムに選抜されたのである。

NRIの担当者はこう語る。「NRIでは、グローバルなビジネスコミュニティーのために、その中に入って働くことのできる社員の育成に尽力しています。横石には、本研修プログラムを活用するための、明快で簡潔な戦略があり、DX事業部のグローバル化を進める手法を学んでいく意欲もあると感じました」。

同担当者はこうも述べた。「横石の仕事に対するコミットメントは高いものでした。彼女なら、この研修プログラムにも貴重な人材になるだろう、との思いもありました。今回のミッションを終了したら、彼女がその経験を生かして、弊社のグローバルな発展を、より高いレベルへと導いてくれるであろうことに、弊社では自信を持っています。

合意とバランスの達成

コペンハーゲンで仕事を続ける中で、「コーポレートガバナンスとアウトソーシングの適正なバランスをとることが難しいと感じている」と横石さんは言う。「異なる部署間の合意を取り付けた上で、さらにすべての規則やガイドラインにも従うことは難しいです。お客様にとって運用可能かつ効果的な、より堅固なネットワークシステムを構築するため、最も有効で効果的なソリューションを探すことが私には求められているように感じます」。

Nordic Fintech Week 2024に参加。北欧地域のフィンテック業界における動向やイベント参加者との交流を楽しみました。
Nordic Fintech Week 2024に参加。北欧地域のフィンテック業界における動向やイベント参加者との交流を楽しみました。

横石さんは、コペンハーゲンで仕事をすることで、日本と異なる職場文化を知る機会を得た。「北欧フィンテックウィーク(Nordic Fintech Week)に参加したのですが、新しいサービスの着眼点や北欧ならではのソリューションを学ぶことができました。」と、横石さん。低コストでのセキュリティーレベル向上のためのサービスやSDGsへの取り組み具合に応じた企業評価を行っている会社を目の当たりにした。「購入した物のレシートの電子化の取り組みは自分の生活に近いサービスということもあって、デモにも参加させてもらってとても楽しい経験になりました。クレジットカードで支払いをするたびに、関連データが自分のスマホの画面に表示されて、個人のフォルダーに保存することもできる。これを使えばペーパーレスも実現できる上に、ユーザーは支払いの内容を確認・分析し、個人情報を守ることもできます。企業にとってもユーザーにとっても効果的で即時性のあるサービスだと感じました」。

「デンマーク拠点への赴任前は常に何かしらの予定に追われているという日々だったように感じ、また、それはどこに行っても同じなのだろうと思っていました。でもこうして北欧に来てみると、異なったビジネスの進め方があるし、金融業界に対する見方も異なってきます。企業は、環境保全や職場における多様性、平等、インクルージョンの実現などに対する取り組みによって格付けされたり評価されたりしています。こちらではSDGs(持続可能な開発目標)やESGがとても大きな評価指標としてあります。ビジネスのこうした方向性は、主に成長性や業績で企業が評価される日本とは異なるところだなと感じました」。

新たなライフスタイルの発見

新たな職場環境を体験したことで、横石さん自身のライフスタイルにも大きな変化が訪れた。「私は長時間働くことに慣れていたので、コペンハーゲンでは、従業員が午後4時や5時きっかりに仕事を終えるカルチャーのある会社があることを知って驚かされました。金曜日になると、午後4時にはオフィスの出口を気にし始め、5時になるころには事実上誰も残っていないんです。皆週末の計画を持っていて、平日はずっとそれを楽しみにしています。多くの人が個人の生活を非常に大事にしていてます」。

ロンドン旅行ではミュージカルが最高でした。オクトーバーフェストに参加するためにドイツ・ミュンヘンへ! 日本の国内旅行のような感じでEU諸国へ旅行できることに驚きました。
ロンドン旅行ではミュージカルが最高でした。オクトーバーフェストに参加するためにドイツ・ミュンヘンへ! 日本の国内旅行のような感じでEU諸国へ旅行できることに驚きました。

そうした文化を目の当たりにした結果、横石さん自身も個人の時間をより大切にするようになったという。「EU圏内での旅行なら、日本の国内旅行のような感覚で他国に旅行することができます」。十分な休息をとることは、実は職場にとっても良いことなのだ、と横石さんは言う。週明けには誰もがすっかりリフレッシュして仕事に戻ってくるからだ。

日本は、国としてはこうした分野における後進国であるかもしれないが、NRIでは社員一人一人が個人として扱われていると横石さんは感じている。これは、多くの日本企業が実現しようと苦労していることだ。「性別や年齢によって特別扱いをされていると感じたことはなかったですね」と、横石さん。

上述のNRIの担当者は言う。「弊社では、あらゆるレベルで多様性とインクルージョンが優先されるよう努めています。男女平等の面では、NRIには優れた実績があります。弊社には子育てをしている女性のエンジニアもいますし、女性のマネージャーや重役もいます。育児休暇を取得する男性社員も多いです。また、弊社では常に、外国人の社員やパートナーも大切にしています」。


野村総合研究所 (NRI)

野村総合研究所は、コンサルティングからITソリューションまで一貫したサービス提供によって新たな社会価値を創造し、顧客の組織・ビジネス変革や様々な社会課題の解決に取り組んでいます。課題の発見から的確な解決策にまで導く「コンサルティング機能」と、先進技術を駆使したシステム開発・運用で課題解決を実現する「ITソリューション機能」を組み合わせることで、独自のビジネスモデルを展開しています。

● 本社:〒100-0004 東京都千代田区大手町1-9-2 大手町フィナンシャルシティ グランキューブ
● URL: https://www.nri.com/en/


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