KPMGコンサルティング
南 晛碤 さん
DXA部門のマネジャー
大学進学とともに来日し、大学卒業後、新卒で日本の企業に就職。その後、国内の大学院でMBAを取得後、2017年にKPMGコンサルティングに入社。DX全般に関わるプロジェクト推進チームを率いる。

企業を取り巻く環境がめまぐるしく変化する中、KPMGコンサルティングは、デジタルトランスフォーメーション(DX)をはじめ企業の変革を支援している。同社は、テクノロジーの変革とリスクマネジメントにおける深い知見を活かし、クライアントの真のエンドツーエンドのパートナーとして、市場における新たな価値の実現を支援する。

それゆえ、コンサルティングサービスの核となる人材の育成を重視し、社員一人ひとりの持つ強みや視点を活かす職場環境づくりに取り組んでいる。それぞれの状況に応じて社員が柔軟に働くことのできる体制を作ることで、パフォーマンスの最大化を目指す。

同社では、具体的な内容のインクルージョン、ダイバーシティ&エクイティ(IDE)方針(「帰属意識」と定義される「インクルージョン」を強調して「IDE」と名付けられている)を規定し取り組みを推進しており、その一例として子育て中あるいは介護中などの社員の短時間勤務制度や、女性社員のメンター制度がある。IDEは同社のDNAに刻み込まれているものだ。同社のカルチャーでは多様性が重視されており、それゆえ社員は自分の意見が聞き入れられ、自分の貢献が真に評価されていると感じることができる。

Digital Transformation Acceleration(DXA)チームのマネジャー、南晛碤さんもこうした実感を持つ社員の一人だ。2017年の入社以来、DXに関わるプロジェクトに従事している。個々のクライアントの現状に合わせ、戦略立案、業務改善、システム導入から、DX推進人材の育成やDXを当たり前とする社内文化の醸成など、幅広いDX推進を支援するのが彼女の仕事だ。

困難を機会に

韓国・釜山出身の南さんが来日したのは、大学留学が目的だった。その後、外国人にとってはしばしば困難な日本の企業文化を体験しながら、持ち前の前向きな性格を発揮していった。

「日本に来たばかりのころは、日本語がほとんど話せなかったです。国際的な大学に入学して外国人が多かったものですから、英語だけでもキャンパスライフにはまず問題ないだろうと思っていました」と、南さん。

「ところが、地方にある大学のキャンパスを一歩出ると、英語がわかる人はほとんどいませんでした。日本語を勉強しないとやっていけないなと、すぐに思い知りました」

その後は日本語を猛勉強し、今ではビジネスのどんな場面でも問題なく対応できるようになった。

南さんは、多文化共生が当たり前の環境で楽しく学んだ。学生時代に体験した多様性とインクルージョンの環境が、彼女のその後のKPMGコンサルティングでのキャリアの土台となった。

だが卒業後に就職した日本のメーカー企業では、文化的な「壁」も感じたという。若い、女性である、外国人である、という理由でチャンスを公平に与えてもらえてないと感じることもあった。

「それでも私は仕事に対してプライドを持っていて、しっかり実績を出して評価されたいと思ったので、あきらめずに仕事に取り組み、ビジネス日本語とプロフェッショナルとしての姿勢と実力を磨くための努力を続けました」と南さん。「環境がドラスティックに変わることはなかったですが、自分の振舞いとマインドが変わり、自信を持って自分軸で仕事を進めることができるようになりました」。

こうした決意で取り組んではいたものの、南さんは次第にその仕事が、本当に自分がやりたいことなのか疑問を持つようになっていった。悩んだ結果、自分を磨くためにもっと勉強するべきだという結論に至った。「思い切ってその会社を辞めて、国内の大学院にあるMBAプログラムに入学しました。大学院ではビジネスにおける知識を得るとともに、学ぶことの楽しさを再発見することができました。人にも恵まれ、その時代に知り合ったクラスメートや先生方、アルバイト仲間たちとは今も仲良くしています」と南さんは言う。

コンサルティングでのキャリアを積む

MBAプログラムを修了した南さんは、KPMGコンサルティングに就職した。同社ならキャリアを伸ばしていけると思えたためだ。「KPMGコンサルティングに入社した時は、自分はビジネスコンサルタントとして働くのだと、当たり前のように考えていました。ところが最初に配属されたのは、大規模なRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入に関するプロジェクトでした」と南さん。「テクノロジーのバックグラウンドもなかったので、最初は戸惑いました。でもこのときの経験のおかげで、テクノロジーが今後のコンサルティングの仕事には必要不可欠だと気づきました。現在はDX関係の取り組みの支援が私の主な仕事です」。

KPMGコンサルティングでは、人材の育成とインクルーシブなカルチャーの醸成を非常に重視している。南さんの体験から、社員一人一人が、業務における問題解決や自分のキャリア設計に率先して取り組むことを奨励する同社の姿勢が伝わってくる。

南さんは、DXコンサルタントとしてのキャリアを決心したものの、最初は自身のテクノロジースキルを高めるのに苦労したという。「でも、自分の弱みを強みに変えようと時間をかけるよりも、自分に欠けている部分については同僚の力を借り、私自身は自分の強みを伸ばすことに集中した方が、自分にもクライアントにも最適な結果を出せるだろうと気づいたのです。そう考えることで自分の中でバランスをとることができました」と南さんは言う。「そこからは、一人でなんでもこなそうとはせず、チームの仲間と協力してプロジェクトを成功させることができるようになりました」。

積極的な姿勢と実行力が彼女を前進させ、結果、彼女はマネジャーへと昇進した。

アートが好きで美術館巡りはもちろん、絵を描いたりもします! 次は何を描きに行こうかな~。我が家の門番、エヴィ&ジェナ。在宅勤務時の癒し担当でもあります。
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インクルージョンの醸成

KPMGコンサルティングにおける南さんの役割は、入社当初から大きく変化した。「ジュニアコンサルタントだった頃の私は通常、一度にひとつのプロジェクトを担当していました。でもマネジャーになってからは、同時に複数のプロジェクトを担当していることが多いです」と、南さん。この変化によって、彼女は課題を巨視的な視点で見ることと、より根本的な課題に対処するための対応策を戦略レベルで提案することができるようになったという。

マネジャーとなった南さんは、自分のチーム内にインクルーシブな環境を作り出すことの大切さを強く感じている。「私は人とコミュニケーションをとることは割と得意なのですが、マネジャーになってからは、ビジネスという場でのチームマネジメントは単にフレンドリーであればいいという単純なものではないことに気づきました。自分自身も含めてチーム全体で広い視野、成長意欲、誠実さ、リスペクト、オーナーシップなど様々な要素を持つ必要があるんです」と南さんは説明する。

「そういった要素は、チームメンバー個人の努力に任せっぱなしにするわけにはいかなくて、組織、というか、私みたいな上司の立場にある者がリード・サポートしていかなければなりません。それがマネジャーにとって一番大切な役割なのだ、と私は思っています」と、南さん。

南さんは、チームメンバーに対して、求めることや目標を明確に伝えるようにしている。「私がコミュニケーションで心掛けているのは、自分が期待する内容や自分の気持ち、そしてチームに持ってもらいたい共通の目的意識を率直かつ正確に伝えることです」と言う。自分が尊重されている、自分にもアイデアを提供する権限が与えられている、とチームメンバーが感じることができ、コミュニケーションが自然と双方向になるような環境を、オープンな対話を通して維持しようと彼女は努めている。

最近ゴルフを始めました。ボールは全然前に飛んでくれませんが、開けた景色を見られるだけで満足です。
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イノベーションの促進における多様性

南さんのコミュニケーション重視の姿勢は、彼女のクライアントとのやりとりにも反映されている。クライアントのプロジェクトに対する責任が大きくなるにつれ、経営層を巻き込むことから受けるプレッシャーも感じるようになった。「高度な専門知識を提供するだけでなく、すべての発言と行動にプロフェッショナルとしての価値が備わっていることが重要なのです」と彼女は言う。

KPMGコンサルティングでは、多様性こそが、イノベーションと創造性を推進するカギであると考えられている。南さん自身も、多様な視点が、クライアントにとってより効果的なソリューションにつながると実感した経験を持っている。南さんによると、現在、多くの企業が業務にDXを導入しているものの、その恩恵を十分に実感できている企業は少ないのだという。大きな課題として南さんが指摘するのは、包括的な視点でDXを推進できる人材が社内にいないことだ。

「DXの取り組みの多くでは、指揮できるリーダーがクライアントの社内にいなかったり、プロジェクトが一握りの人たちに過度に属人化してしまったりして、結果的に外部のリソースであるコンサルティング会社などに依存せざるを得ないんです」と南さん。

「外部リソースを活用することが有効であるのは間違いないのですが、社内にもDXを主導できる人材を育成していく必要があります。クライアントのDXが自然と進むようなカルチャーを醸成するために、当社では、継続的に成長できるための土台を築くことを重視しています」と話す。最終的には、クライアントが外部の支援がなくともDXを自走できる状態に導くことが目標である、とも指摘する。

南さんが関わっているプロジェクトの中には、自分がまだ経験したことのない分野に踏み込まねばならないものもあるという。しかし彼女が常に意識しているのは、目の前の仕事に積極的に取り組み、同僚たちを巻き込み、クライアントの期待を上回る成果を出すことだ。

将来を見据えて

南さんにとって、キャリアは職場での「幸せ」を実現する手段だ。「前より少しでも良い資料を作成したり、クライアントからチームメンバーへの嬉しいフィードバックをいただいたり、些細なことでもいいのです」と彼女は説明する。そうした充足感が、仕事における全体的な目的意識や満足感につながっている。

東京オフィスにて
東京オフィスにて

「今のところ、具体的なキャリアプランは特に意識していません。プロフェッショナルとしてのスキルを着実に積み上げ、一つ一つの課題を丁寧に解決し、よりハッピーな明日に1ミリでも近づくことができるよう努力をし続けたいですね」と彼女は語る。「それでも、長期的な視点で考えると、当社の上級職である「パートナー」になってクライアントやマーケットにバリューを届け続けたいですし、後進のコンサルタントたちの育成にも貢献したいと考えています」

「目指すのは、KPMGコンサルティングの多様なメンバーが、それぞれのスキル、才能、思いを生かし、共通の目的意識を持って、自分自身、ビジネス、社会に良い影響を与え続けることができるような環境を作り出せるパートナーになることです」と南さんは説明する。

南さんの歩みは、KPMGコンサルティングのIDE重視のカルチャーが、いかに個人の潜在的な能力を引き出し、自信を持って仕事ができるようになるまで成長させるかを示す、示唆に富む例だ。KPMGコンサルティングは、多様性を受け入れ、すべての社員が活躍するインクルーシブな環境を育むことで、職場とクライアントの双方に豊かさをもたらしている。互いを認め合い、多様な働き方を奨励することで、社員がそれぞれの価値観に合ったキャリアを形成し、自分自身の「働く幸せ」を見つけ、作り出すことが可能となるのだ。


KPMGコンサルティング

KPMGコンサルティングは、KPMGインターナショナルのメンバーファームとして、ビジネストランスフォーメーション(事業変革)、テクノロジートランスフォーメーション、リスク&コンプライアンスの3分野で、グローバル規模での事業モデルの変革や経営管理全般の改善をサポートするコンサルティングファームです。具体的には、事業戦略策定、業務効率の改善、収益管理能力の向上、ガバナンス強化やリスク管理、IT戦略策定やIT導入支援、組織・人事マネジメント、変革等 変革等を提供しています。10年後も社会的に価値の高いエクセレントカンパニーを目指す企業を支援しています。

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