コストコホールセールジャパン株式会社
荻沼 由実 さん
人事・総務 アドミニストレーションマネージャー
中学3年生の春に単身でイギリスに留学。大学卒業後イギリスで経理職に就き、公認会計士の資格を取得した。7年間で3社を経験した後、日本に帰国。証券会社・監査法人を経て、2020年にコストコ入社。2022年4月、産休・育休から復職。
日英で6社を経験し、多文化コミュニケーションに磨きを掛ける
アメリカ生まれの会員制倉庫型店コストコ。高品質な優良ブランド商品をできる限りの低価格で提供するスタイルで、830以上の倉庫店を展開するグローバルチェーンだ。日本上陸は1998年。現在31倉庫店を数え、日本人の暮らしに根付いている。コストコは「オープンドアポリシー」(上司と話しやすい社風)のもと、年齢・性別・国籍などに係わらず最適な人材を雇用する「機会均等主義」、自らキャリアを築いていける「社内公募制度」など、ダイバーシティ・インクルージョンへの取り組みを積極的に推進している。イギリスでのキャリアを含め、コストコが6社目という荻沼さんに、これまでのキャリアと、育児休暇を経た現在の働き方、企業文化の魅力などを伺った。
― 中学3年のとき単身でイギリスに留学されたんですね。何がきっかけだったんですか?
荻沼 もともとは海外で学ぶなんて想像もしていませんでしたが、中学校でオーストラリア人の先生が見せてくれたホームビデオに日本人の女の子が映っているのを見て、留学という道があることを知りました。英語が好きだったため「海外で勉強したい」と両親に言い、3カ月後にはイギリス行きの飛行機に乗っていました(笑)。
― イギリスでの7年の経験の中で、その後のキャリアに大きな影響をもたらした出来事はありますか?
荻沼 携帯電話会社のプロジェクトで、各国の子会社をマネジメントする立場を任されました。トルコ、スペイン、イタリア、日本など、文化も価値観も違う子会社の足並みをそろえてプロジェクトをゴールさせるのがミッションです。初めは本社のメッセージが伝わらなかったり、誤解されたり、コミュニケーションに悩まされました。上司に相談し、試行錯誤する中で分かったのは、相手の文化や価値観、置かれた状況を深く理解してコミュニケーションを取ることの大切さです。最後には親会社・子会社の垣根を超えたワンチームとなり、2年間に及ぶプロジェクトを完走できました。「いい仕事ができたね」と笑顔でゴールできるまで、コミュニケーションについて徹底的に考えさせられ、鍛えられた2年間でした。
― 日本に帰国し、コストコに入社された経緯を教えてください。
荻沼 日本に生まれながら、日本で働いた経験が無かったので、新しい環境で自分を試してみたくて帰国しました。6カ月間バックパックで世界一周しながら転職活動を行い、外資系証券会社に入社。内部統制業務等に携わりました。結婚を機に地方に引っ越し、フリーランスの翻訳者に転身。その後、東京に戻り、監査法人の社内翻訳者になりました。
積極的に転職活動をしていたわけではありませんが、もう少しお客様の近くでビジネスに関わりたいと思い始めたころ、出合ったのがコストコの人事総務職の募集です。人事業務と翻訳業務のあるポジションに人事職未経験から応募できるという求人でした。私は多くの会社を経験し、色々な人事制度のもとでキャリアを積んできました。人事の経験はありませんが、新しい視点で貢献できるかもしれないと希望を抱いて応募したところ、無事入社することができました。在英中からコストコのファンで、会社自体に親しみを感じていたのも、働きたいと思った理由です。
「上司と話しやすい社風」の下、誰もが挑戦のチャンスをつかめる
― コストコでのお仕事について教えてください。2020年3月、コロナ禍真っただ中の入社でしたね。
荻沼 出社1日目から驚かされたのは、人事部長の最初の言葉が「大変な時期に転職してきてくれてありがとう」だったことです。さらに、初日の業務が終わったとき、掛けられた言葉が「お疲れさま」ではなく、「今日は一日ありがとう」。良い会社に入社できたと初日から思いました。
この日だけでなく、コストコは「ありがとう」をたくさん交わす会社です。経営層からのメッセージも必ず、従業員や会員様への感謝の言葉で締めくくられています。倫理綱領(Code of Ethics)に掲げられている「従業員を大切にする」の通り、大事にされているのを実感できます。
入社後、携わっているのは人事総務の幅広い業務です。就業規則や社内規定の整備・改訂が主な担当業務ですが、入社直後に緊急事態宣言が発令され、コロナ対応関連の社内ガイドラインやFAQの構築にも携わりました。年4回の社内報の発行、CEOのビデオメッセージの字幕作成、日本向けトレーニング資料の作成など、翻訳を伴う業務では語学力を生かせています。
― 2カ月前に育児休暇から復職されたばかりだと伺いました。育児との両立はいかがですか?
荻沼 入社2年目に産休に入ることになり、私としては「まだ戦力になっていないのに申し訳ない」という気持ちもありましたが、上司に妊娠を報告すると、そんな懸念を吹き飛ばすように喜んでくれました。復帰したときも「おかえりなさい」と温かい言葉で迎えられました。PCを立ち上げるとパスワードを忘れていて(笑)、助けを求めて電話したヘルプデスクの方からも「ユミさん、おかえりなさい」という言葉を頂きました。こんな素敵な言葉をサラリと言える人がたくさんいる会社なんだと実感しました。
復帰後も、慣らし保育の間、毎週のように半休や有給休暇を取得していました。上司から「○○ちゃん(娘)にとって試練の時ね」という言葉を頂き、ハッとさせられました。本当に大変な思いをしているのは病気にかかっている娘の方。仕事と育児を両立させようという私の小さな協力者に寄り添った言葉を掛けてくれたのです。仕事の上で成長できるだけでなく、人として気付きを得て成長できる職場です。
― 多くの会社を経験された荻沼さんから見て、コストコならではの企業文化の特徴はどこにあると思われますか?
荻沼 まずは「オープンドアポリシー」(上司と話しやすい社風)があります。役職に係わらずファーストネームで呼び合う文化があり、誰にでも質問・相談しやすい風土が根付いています。私自身、倉庫店の経験はほとんどないため、現場出身の同僚たちに頻繁に質問して学んでいます。
人材採用にあたっては、年齢・性別・国籍などに係わらず最適な人材を雇用する「機会均等主義」を徹底しています。入社後も「社内公募制度」でダイバーシティを推進。90日間の試用期間以降は、本社・倉庫店・物流センターのどの求人にも応募でき、全従業員に平等にチャンスが開かれています。実際、倉庫店から本社へ異動し活躍する例も多数ある他、入社6年で300~400名規模の副倉庫店長に就任する例もあります。こうしたステップアップを後押しする研修も充実しており、意欲と実力次第で、各自が自分らしいキャリアを切り開いていけます。
多様な人材が存在するからと言って、必ずしもインクルージョンを実現できるわけではなく、実現には自発的な「行動」が不可欠です。産休・育休の際も感じたのですが、コストコでは制度が整っているのはもちろん、実際に機能しています。「Inclusion starts with “I”(私から始めるインクルージョン)」を掲げ、マネジメント層が制度の意味を理解し、従業員が利用しやすい環境を作っているからでしょう。その成果は「育休取得率95%」「復帰率95%」という数字にも表れています。最近、男性の育休取得が話題になっていますが、コストコではすでに数カ月単位の取得が当たり前になっています。
左:毎日保育園に笑顔で登園してくれるので、 私も笑顔で出勤できます。 仕事と子育ての両立を応援してくれる 小さな協力者です。
右:日本百名山制覇に挑戦中です。 毎年、登山シーズンが待ち遠しくて仕方ありません。 主人と娘との初登山はどこにしようかと計画中です。
可能性にブレーキを掛けず失敗を成長の機会に
― 仕事をする上でどんなことを大切にされているか、教えてください。
荻沼 保育園のお迎えもあり、私の時間は限られています。その中でクオリティーの高い仕事をするために何をすべきか、常に自問自答しています。何をするにも、どんな成果を求められている仕事なのか、まず大枠を理解することを大切にしています。その上で、任されたことは丁寧にやり遂げ、上司に安心して仕事を任される存在になることを目指しています。
そして言行一致。身近な上司や同僚たちの日々の言動が、会社のミッションや倫理綱領と一致しているからこそ、従業員が同じ方向に向かって走れます。
― 最後に、読者にメッセージをお願いします。
荻沼 何にでも挑戦してみるタイプの私ですが、失敗はイヤですし、失敗すれば凹みます。ですが、可能性に自分でブレーキを掛けない姿勢は大切にしています。もし「経験が無いから無理だろう」と諦めていたら、コストコの求人を見ても挑戦できなかったでしょう。「挑戦したい」という気持ちを全力でサポートしてくれる場所がコストコにはあります。失敗を成長の機会と捉える文化があり、一緒に原因や改善策を考えてくれる上司がいます。誰もが自分らしく働けるように個性や能力を生かし合う企業文化の良さは、きっと初日から感じていただけると思います。
コストコホールセールジャパン株式会社
アメリカ生まれの会員制大型倉庫型店。「経費を節約し、その分を会員に還元しよう」という企業哲学のもと、高品質な優良ブランドをできる限り低価格で提供している。コストコが誕生したのは1983年。ワシントン州シアトルの倉庫店から、その歴史はスタートした。当初は普通の倉庫店だったが、特定個人を対象とした大型会員制倉庫店というスタイルを確立し、人気をさらった。現在の社名である「コストコ ホールセール」となったのは1997年。全世界12の国と地域に830倉庫店以上、30万人以上の従業員を抱えるグローバル企業となった。日本にコストコがオープンしたのは1999年で現在、全国に31倉庫店があり、従業員数は約13,000名を数える。
● 本社:〒210-0832 神奈川県川崎市川崎区池上新町3-1-4 ※今夏木更津に移転予定
● URL:https://www.costco.co.jp/
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